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【十二国記】Episode0「魔性の子」ブックレビュー

2019年10月25日

こんにちは、さぷり(@supple_blog)です。

十二国記シリーズ最新作「白銀の墟 玄の月」が発売されましたね。

私は今、全シリーズを読み返している真っ最中です。

学生の時に購入したホワイトハート版は売ってしまったので新潮社版を新しく購入しました。

読むのは十数年ぶり。新潮社版は新たな装画・挿絵が全巻描き下ろし、各巻全てに修正が施された完全版です。2012年から刊行されていました。

実は読み返している…といっても未読が数冊あって、最新作の関連書籍は3冊中1冊しか読んでいなかったことに最近気づきました。

「風の海 迷宮の岸」だけ読んでいたみたい。

てっきり全部読んでいるものだと思っていました…

なんということだ…新作が存分に楽しめないではないか!!Σ(゚д゚lll)

アニメ版は全話観たものの、最新作の舞台となる戴国の物語は原作でしか読めない部分がほとんど…。

さぷり
これは読むしかない!

まず手に取ったのは十二国記シリーズ エピソード0と言われる「魔性の子」。アニメで少し語られていた泰麒の物語の続編となる作品です。

未読だった「魔性の子」、読み終わりましたのでブックレビューをしていきたいと思います。

読書感想文はかなり苦手だったのですが、あまりにも衝撃的な内容だったので書かずにはいられませんでした。

物語の主要人物の高里と広瀬についての感想を分けて書きます。

ネタバレ、個人の解釈が入りますので苦手な方は回れ右でお願いしますm(._.)m

概要とあらすじ

異世界が現実世界の人間社会に干渉したときの恐怖を、現実世界側からの視点で描くホラー色の濃い物語。

広瀬は母校である名門私立男子高校に教育実習生として赴任した。在校時の担任・後藤の指導の下2年生のクラスを担当した広瀬は、異質な生徒・高里要に興味を持つ。広瀬は生徒の噂話から高里が幼少時に神隠しに遭っていたこと、それ以来高里の周囲で「祟り」が起こっていることを聞く。当初は真に受けなかった広瀬だが、神隠しと祟りの噂を聞いて高里を問い詰めた橋上と、その噂を話した築城が相次いで不思議な状況で怪我を負ってしまう。広瀬は後藤や生徒から、事実高里が1年間行方不明だったこととその間の記憶を失っていること、2年生には不審な事故による怪我人が多く死者も出ていることを聞かされ、広瀬自身も幼い頃臨死体験をしていることからより強く高里に興味を持つようになる。

引用 ― Wikipediaより

28年前に書かれた十二国記の序章

私は「風の海 迷宮の岸」を先に読んでいたので、泰麒の物語がこんなに重いストーリーになっているとは思いませんでした。

アニメでは異世界に戻ったはずの泰麒が高里要として現代で生きていること、そして彼の周囲で起こる奇怪な事件に少しだけ触れています。

話に続きがありそうだとこの時点で明らかだったのですが、原作で続編が出ていることを知らずに今まで過ごしてしまいました。

一番驚いたのは十二国記の世界観が28年前に出来上がっていたこと…小野不由美さん神ってます。

ホワイトハート版の後書きでは「魔性の子」が十二国記の話と繋がっているということを明かしていたようですが、読んでいなかったのかな…全然覚えていませんでした(反省)

高里(泰麒)と周囲の人々について

次々に起きる奇怪な事件

高里に関わると祟られる。彼の態度に意見した生徒の凄惨なシーン、屋上で起こる悲劇的なシーン、主要人物ではない「その他一般の生徒」の精神状態にも暗い陰を落としていく様…その課程にかなり気が滅入りました。

実際には高里を守る妖や獣が引き起こす厄災なのですが、人間側からすれば常軌を逸しています。それは回を増すごとにエスカレートし犠牲者を増やしていきます。

息子を虐げた家族の最期

高里一家の最期も何となく分かっていたものの、その文章表現に絶句してしまいました。

まるで血生臭さが充満する異様な光景の部屋に入り込んでしまった心境になったからです。

背筋が凍り付いたというか、固まってしまいました。

時間差で語られる母親の複雑な心情は察するに余りあります。

母親は最初から自分の息子を疎んじていたわけではありません。それどころか心から愛していました。

「本当の息子は神隠しの後に取り替えられた」と考え始めるまでは…。

容赦ない無差別報復と清浄な高里の心

彼を守る妖と獣には善悪を判断することが出来ません。高里に有害なものだと判断すれば容赦なく人々の身体に牙を剥きます。

取り返しが付かない事件後に全てがウソだった…とご都合主義にならない展開に目が離せませんでした。

そして、どんなに理不尽なことが起きても取り乱さずに受け入れてしまう高里の姿は、彼の正体を知っていたとしても不気味だと感じます。

その不気味さは私にとっては「清浄で神々しい」という意味なのですが。

広瀬の心情について

異世界に恋い焦がれた人

孤独と疎外感は誰もがもつ感情ですが、もし自分がこの作品を10代の頃に読んでいたら、「自分の存在するべき本当の場所」「此処では無い何処か」を探す広瀬にもっと共感していたかもしれません。

「風の海 迷宮の岸」から読み始めた私は、一瞬だけ彼も異世界の人間なのでは?と考えました。でもそうではありませんでした。

広瀬は物語の主人公で有りながら高里を取り巻くその他大勢のうちの1人にすぎません。

一見高里と境遇が似ているようにも思えますが、ふたりが決定的に違うのは「高里が異世界に住む麒麟だった」ということ、そして広瀬と違い「本当に帰る場所があった」ということです。

高里には「特別」が与えられ、広瀬は「現実」を叩きつけられました。

広瀬は頭では理解しているのにそれを受け入れられません。

尊い心の裏側に隠された真実

人が人を大切に思う心。それはとても尊いことです。

ただしこの物語では「優しい心の裏には醜いエゴが存在する」ということを包み隠さず教えてくれます。

それは人が受け入れたくない事実かもしれません。なぜなら自分を正当化できなくなるからです。

高里に優しく接する生徒たちの本心は自分が殺されないためです。異様なくらい優しく接しても状況は変わらないと分かった途端、豹変してしまいます。

広瀬が高里に肩入れした深層心理にも人間のエゴが深く関わっています。

人に優しく接する自分の心中を奥深く覗き込めば、その本質は妖や獣よりも恐ろしいものなのかもしれません。

そんなことを思いつつ、私は広瀬に感情移入してしまう部分も多かったなと思いました。

私には「故国喪失者」という感覚はないですが、「誰も知らない場所で一からやり直したい」と思う瞬間があります。要は現実逃避なんですが。

自分の中にも広瀬のような感情があるんだな…と思いました。

現実世界に目を背けず生きること

高里は此処では無い何処かに帰ることができますが、広瀬はどんなに願ったとしても帰ることができません…なぜなら現実世界が彼のいるべき場所だからです。

「此処では無い何処か」=理想郷 を求めても、人間は欲深い生き物だから辿り着くことができません。

広瀬は自分を置いて異世界に旅立つ高里に嫉妬心を見せますが、高里が戴の麒麟として課せられた使命や責任については知りません。

もし広瀬が異世界に行けたとしてもそこには彼の居場所はないのです。

後藤が「俺たちを拒まないでくれ」と広瀬を諭すシーンの文面は少し複雑な気持ちで読みました。後藤の言葉には「醜く汚い世界でもそこから目を背けるな」という意味も含まれているからです。

今まで拒み続けてきた現実世界に何処まで耐えられるのか…

押しつぶされれば、弱い人間には悲惨な運命が待ち受けているかもしれない。

どんな美辞麗句で飾り立てたとしても、人生に折り合いをつけて生きていかなければならない時があります。

綺麗な生き方はかえって人を縛り付けることになるかもしれない…人間社会で生きていけない人を生み出すかもしれない。

哀しいことですが、人は決して綺麗事だけでは生きていけません…。

それでも真っ直ぐな生き方に涙する、感動する人間がいると言うことも忘れてはいけないと思います。

人間の本質は「悪」だけではなく「善」もあり、その2つは表裏一体だから。

私は広瀬の「高里を救いたい」という気持ちは悪から生まれたものではないと思っています。

広瀬も高里も哀しい立場にありました。自分の居場所を求め、高里に依存していた広瀬には後藤の言葉は酷だったかもしれません。

彼が生き残ったかを知るものはいませんが、あの巨大な大津波から生き残ることができていたのなら、幸せに生きていて欲しいと願います。

総評

本筋を知らないと謎が解明されない部分も多々あるので、正直言うとスッキリしない終わり方です。…と言いつつ読後は放心状態になる作品でした。

不思議な感覚です。

広瀬は現実を知り、高里(泰麒)は元の世界に戻った。ある意味で2人は救われたのかもしれません。

「魔性の子」は十二国記シリーズ(特に戴国関連の作品)と併せて読めば、現代と異世界の両方の視点から楽しむことができます。

十二国記シリーズより先に「魔性の子」を読めば、広瀬をはじめとした人間達の視点で高里を見ることになります。

現実世界の側からすれば、彼は神隠しにあった異質で不気味な人間です。

読者はホラー作品として読み始めます。

逆に「風の海 迷宮の岸」「黄昏の岸 暁の天」から読み始めれば、 異世界側から話が展開します。そのため「魔性の子」は十二国記シリーズの本筋・序章として読むことができます。

読み始める順番によってキャラクターの印象や世界観の捉え方が変わるので、贅沢な楽しみ方が出来るのは良いところだなと思います。

終わりに…

「正義」や「愛」がテーマの物語も大好きな私ですが、夢も希望もないこの作品を読んで、かえって地に足がついたような気がしました。

さぷり
でもやっぱ怖かった…(本音)

さて、「魔性の子」の物語と対となる「黄昏の岸 暁の天」をこれから読み始めますが、「風の海 迷宮の岸」が恋しくなったのでこちらを先に読み返そうと思います。

新作を読むまで遠い遠い(。-∀-)
一気に作品を堪能すれば、読後の満足感は半端ないということだけは確信しているので私的に問題ないのです。

さぷり
夜更かし…何ソレ美味しいの?

夢中になって読んでしまいそうです。

もし十二国記シリーズは未読という方、再読したいと思っている方がいらっしゃれば、このブログを見たのを機に色々読んでもらえたら嬉しいなと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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